二人は、なだらかな坂の途中にある古い家を借りた。 その坂は「雲母坂（きららざか）」と呼ばれていた。
その土地は雨が多く、雲をたくさん生み出すということから、そんな名前がついていた・・・。
『月の岬』（第5回読売演劇大賞最優秀作品賞・優秀演出家賞ほか受賞）
『夏の砂の上』（第50回読売文学賞受賞）で数々の賞に輝く、松田・平田コンビが放つ待望の新作、ついに登場！！

松田・平田作品劇評より

～無意識のエロスの緊張感～

何げなさの裏に隠された演出の的確さ、精度の高さ！ それだけでも見ごたえ十分だが、何より無意 識のエロスが張りめぐらされる男女の緊張に満ちた空間の強度がすばらしい。（中略） 弟の結婚という外から迫る日常のエロスによって、姉弟の禁断のエロスがあぶり出されてゆく。それは、 タナトスつまり死へむかうほか出口のないエロスである。平田オリザの自作が静謐な小津安二郎に近いとすれば、 松田の戯曲は成瀬巳喜男の世界だろう。
梁木靖弘（『月の岬』劇評）◎朝日新聞（西部版）2000.8.31より抜粋

～現代の絶望を描く～

社会の中でうまく生きることができない人間のあえぎとあきらめを、松田は残酷さと優しさをない交ぜにして紡ぎ出す。（中略） 濃密な物語と凝縮された舞台展開で、ぐいぐいと引き込まれる。初演から半年のインターバルは、 かえって俳優たちの演技の質を高めた。松田の世界観を的確にすくい上げた平田の手法が光る。
神谷浩司（『夏の砂の上』劇評）◎日本経済新聞 1999.5.13より抜粋