地域社会との交流

青年団は、常に新しい観客との出会いの場を求めてきました。青年団が各地で旅公演を行なう積極的意義は、青年団という劇団に対して、何らの先入観も持たないで劇場を訪れる地域の人たちと交流をはかることにあります。公演の際にはかならず、ワークショップやレクチャーを併設し、旅公演が単なる巡回興行に終わらないようなシステムをつくりだしてきました。さらに、できるだけ多くの時間を現地でとる「滞在型」公演も、積極的に行なっています。
 
 

空間に応じた上演

青年団は、「こまばアゴラ劇場」をフランチャイズに、この空間でしかできない作品を作るという作業を継続してきました。アゴラ劇場以外での公演も、小空間での上演を基本としていますが、その空間に応じた公演を行なっています。新たな空間との出合いも青年団の旅公演のもう一つの意義です。近未来の美術館のロビーを舞台にした『東京ノート』は、全国の実際の美術館のロビーを使っての公演も行なわれています。これも青年団の作品と演劇空間とのすばらしい出会いのひとつといえるでしょう。
大ホールでの公演では、小空間での上演という基本に沿って、舞台上に客席を仮設し新たな空間を作り上げる「舞台上仮設劇場」の手法をとることによって、公演を行なっています。フランスの国立演劇センターでの公演でも、同様の手法がとられました。
 
 

滞在型製作

全国各地での公演の成果を踏まえ、青年団は、地域社会、地域劇団との継続した共同作業のプロジェクトを行なっています。これは単なる「呼ぶ、呼ばれる」という興行の関係を越えて、演出家・平田オリザと青年団の俳優が現地に長期滞在し、オリジナル作品を作ろうという試みです。1996年には、京都での滞在型制作で『月の岬』を演出、読売演劇大賞最優秀作品賞を受賞。2007年には、『隣にいても一人』を、三重、広島、青森、熊本の四地域で作成し、大きな反響を呼びました。
 
 

アトリエ春風舎

青年団では、長年「アトリエMODE」として親しまれてきた空間を引き継ぎ、小竹向原に「アトリエ春風舎」を2003年11月にオープンしました。新しい表現を求めて実験を試みる工房として機能するよう、稽古を重ねたスペースでそのまま試演会やアトリエ公演が実施できる設備を有し、青年団リンクの各ユニット、青年団演出部の新しい稽古場、発表の場として、最大限に活用しています。