朝鮮戦争で分断国家となった韓国と北朝鮮。
その分断線である北緯38度線一帯を非武装地帯<DMZ(Demilitarized Zone)>地帯と呼ぶ。
韓国演劇界の旗手、呉泰錫(オ・テソク)が最新作をひっさげて、こまばアゴラ劇場/夏のサミットに登場!!
そこは、私が生まれた時から非武装地帯でした。
非武装地帯の動きによって、あたかも世の中すべてが変わるかのように騒ぎもしました。
しかし、そこは今も、秘密のベールに包まれています。
忘れられた場所でありながら、
私たちの体のどこかにいつも存在し、
影のように私たちについてまわる分断国家の傷、DMZ。
そこは、とても平和で静かにみえても、
民族の死を生々しく記憶している生き証人。
『I LOVE DMZ』は、DMZを守ろうとする動物たちからみた
朝鮮半島の未来に対するお話です。
ヤギ、牛、馬、水スマシ、ロバ………
動物たちが語るDMZの世界に、
その緑の楽園に、
すべての子どもたち、いいえ、すべての皆さんと一緒に旅立ちたいと思います。
作・演出 呉泰錫
『I LOVE DMZ』という題名を聞いて、「え、木花が政治劇を作るの?」 と少し驚いたのだった。その後、この作品が児童劇の演劇祭に参加すると聞いて、 私はますます混乱した。そして、作品の内容を聞いて、すべての合点がいったのだった。 演劇人の最大の矜持は、どんなに困難な局面においても、それをユーモアとペーソスで笑い飛ばすところにある。国家の分断という韓国国民にとっての最大の困難を、DMZに棲む動物たちの姿を通して、児童劇の体裁で描くなんて、やっぱり呉泰錫は、なんて格好いいんだろう。
総合プロデューサー 平田オリザ
DMZ(Demilitarized Zone)-非武装地帯
朝鮮戦争で分断国家となった韓国と北朝鮮。
その分断線である北緯38度線一帯を非武装地帯〈DMZ(Demilitarized Zone)〉と呼ぶ。
1953年7月27日の休戦協定に従い設置された軍事境界線がまさに現在の休戦線と非武装地帯であり、朝鮮半島を西から東にかけておよそ248km(155マイル)の長さで分けている。
非武装地帯は軍事境界線を境に南北2kmずつに分割されており、およそ6万4千坪に至る広大な区域である。ここには、南北共に100万名に近い軍隊が24時間態勢で銃を構えて待機している。
また、この地域には約21万個の地雷が埋められているという。これが朝鮮半島の現実である。
しかし、自由に人が足を踏み入れられないこの一帯は自然の宝庫、天然記念物に指定されている絶滅の危機に瀕する動物たちも数多く生息している。
呉泰錫(オ・テソク)
劇作家、演出家、劇団 木花レパートリーカンパニー代表。 1940年生まれ。延世大学哲学科卒業。 現在、韓国が世界に誇る演劇人のひとりである。 1980年、自作の『草墳』を在日韓国人と日本人の俳優と共に日本で公演して以来、 三井フェスティバル(『胎』)、タイニイアリスフェスティバル(『春風の妻』『鴎よ!』 『朝、ひととき雪か雨』など)、地人会企画『母』による3部作、パルコ劇場企画 『火の国』、『胎』日本3都市公演、アジア演劇祭IN関西(『春風の妻』)など、数々の作品を日本で公演。 呉泰錫作品は韓国内でも、その独特な劇世界、そして韓国社会と歴史のはざまに生きた人々を描き、常に高い評価を得ている。現在、ソウル芸術専門学校劇作科で教鞭をとる。
劇団 木花レパートリーカンパニー
呉泰錫の戯曲を中心に上演。創作戯曲、また劇作家が自らの戯曲を自身で演出することの少なかった韓国現代演劇の草分け的な存在。舞台は自由奔放な創造力で、西洋演劇と韓国の演劇を融合し、韓国的かつ普遍的な感情表現をたたえ、力強い舞台を展開する。現在も常に実験的な舞台で韓国演劇界をリードし、国内外で高い評価を受けている。また、新宿梁山泊、青年団の韓国公演のサポートなど日本の劇団との交流も深い。