『フェードル』 アクション映画みたいに!
一人の父親。数カ月間行方不明で、おそらく死んでしまっている。
一人の女。死んだ男の妻は、訳も言わずに死にたがっている。
もう一人の女。囚われ人である彼女の上には、誰の、どんな視線も注がれない。
一人の若い男。押し黙ったまま逃げて、姿を消してしまうことを望んでいる。
これが、フェードルの詩句を通してラシーヌが我々に見せる最初の世界だ。
しかし、この人間関係は、崩壊の結果ではない。むしろそれは、生のあらゆる力が凍結し、錠前をかけた結果のようだ。そしてこの、閉じこめられた生の力は、いま言葉と行為の中に解放されようとしている。
『フェードル』は、この凍えた生の解放についての物語だ。
カオスが、世界全体へと感染していく。
その感染の広がりは、すべての存在を捉えて、はなさない。
舞台は、広がるカオスのこだまする、部屋となる。
(演出家)
『フェードル』上演プロジェクト
『フェードル』上演プロジェクトとは、フランソワ=ミッシェル・プザンティがスロベニア、シリア、アメリカ、日本の各国で、それぞれの国の俳優による4つの異なるバージョンの『フェードル』を制作するという大きなプロジェクトです。すでにスロベニア版を上演したリュブリャナ公演(2004年4月)とシリア版を上演したダマスカス公演(2004年12月)で好評を博しており、スロベニア版『フェードル』の主演女優ベロニカ・ドロルクは本公演の演技によりスロベニアで最も権威のあるボルシェトニック演技賞(2004年)を受賞。今回行う日本公演につづき、今年の秋にはニューヨークにてアメリカ版の上演が予定されています。