『演劇という芸術』
『演劇という芸術』は私が思う「俳優の芸術とは何か」ということに対しての短い宣言である。この40分の作品は「演劇の芸術とは何か」を1人の俳優が彼のイングリッシュ・コッカースパニエルに説明する、少人数の観客に向けた戯曲である。
出演:ルー・カステル Lou Castel
コロンビア生まれ。若くして渡欧、ダミアーノ・ダミアーニ監督の代表的作品『群盗荒野を裂く』(1966)で狂気の殺人者を演じたことにより映画界にとって欠かせない俳優となる。これまでに、ヴィム・ヴェンダース、ライナー・W・ファスビンダー、オリヴィエ・アサイヤス、フィリップ・ガレルなど著名な映画監督の作品約80本のほか、青山真治監督がフランスに滞在して製作した『Le Petit Chaperon Rouge』(2008)に出演。 舞台では、ベルナール・ソベル、ブルーノ・ボグラン、クロード・シュミッツなどの演出家の作品に出演している。
『自分のこの手で』
男性としての女優ケイト・モラン、男性と女性の間、二つのジャンルが混ざり合い、何か両性具有で不純な身体と発話が、一つになろうとし、演劇とダンスのように、この消え行く前のこの一つの同じ身体に命を与える。
出演:ケイト・モラン Kate Moran
米国でダンスと演劇を学ぶ。1998年よりside one posthume théâtreのメンバーとして、『ギルガメッシュ』(2000/アヴィニョン演劇祭)、『愛のはじまり』、『パン』などパスカル・ランベールの作品に数多く出演。その他に、ヤン・ファーブル『死の天使』(2003/アヴィニョン演劇祭)、アメリカのパフォーミングアーツ・グループGAleGAtesによる『1839』、『6つかそれ以上に分かれたオデュッセイア、世界』などの作品、米仏両国の映画やテレビに出演している。パスカル・ランベールの短編映画にも出演している。ニューヨーク在住。
パリ郊外・ジュヌビリエ国立演劇センター芸術監督 パスカル・ランベール 代表的短編2作品上演
平田オリザとパスカル・ランベールの交際は、 私たちの2つの劇場の交際であり、 遠く隔たった場所で同じ1962年に生まれた2人の人間の交際であり、 まるでかけ離れた2つの言語と、その突然の翻訳、と同時に湧きおこる1つのパッション… つまり、「同時代の言葉」である。
パスカル・ランベール
パリの北西、セーヌを渡った対岸の街ジュヌビリエは、マグレブ系と呼ばれるチェニジアやモロッコからの移民が多く住む、典型的なパリ郊外の住宅地である。 この街の中心部に位置するジュヌビリエ国立演劇センターは、赤い屋根が街のどこからでも見える市のシンボルとなっている。 この劇場は、長い伝統を誇るが、最近は少し低迷気味だったところに、一昨年、若き芸術監督(フランスでは、それほど若くはないのだが)パスカル・ランベールが就任した。劇場の内外装が一新され、新しくオープンしたカフェレストランは、昼時は多くの市民で賑わっている。もちろん年間プログラムも、新しい先鋭的なラインナップが組まれるようになった。 ランベール氏は以前より日本に関心が強く、京都に長期滞在した経験も持つ。芸術監督就任後、チェルフィッチュを招聘したり、青山真治監督を招いて映画を製作するなど、旺盛な日仏交流を行っている。 アゴラ劇場、青年団とは、一昨年のランベール氏の二人芝居『愛のはじまり』の上演に続いて、昨年はフェスティバルドートンヌ参加作品として『東京ノート』を秋に上演、そして今年は、私が一ヶ月以上ジュヌビリエに滞在して仏語版の『砂と兵隊』を制作、上演した。今回は、ランベール氏の代表的な短編を二本立てて上演するものだが、今後もアゴラ劇場とジュヌビリエ国立演劇センターは、緊密な連携をとって共同制作などを行っていく予定になっている。
平田オリザ
パスカル・ランベール Pascal Rambert
1962年生まれ。2006年にジュヌビリエ劇場の創立者ベルナール・ソベルの後継者として任命され、翌年ジュヌヴィリエ国立演劇センターの芸術監督に就任。1982年より戯曲の執筆と演出を始め、1984年に自身のカンパニー、side one posthume théâtreを創設。2004年から2006年までアヌシーのボンリュー国立舞台のアソシエイト・アーティストを務める。これまで、フランスの主要フェスティバル、国立劇場、国立演劇センターのほか、ヨーロッパ、アメリカ、日本で上演を行っている。 近年の作品として、マルク・モネのオペラ『パン』(2005)、子供向け作品『私の幽霊』(2006)、1993年ナンテールアマンディエ劇場制作作品の再演『自分のこの手で』(2007)、こまばアゴラ劇場において青年団の俳優とともに制作、上演した『愛のはじまり』(2007)、ジュヌビリエ劇場制作の『人生の全て』(2007)、ルー・カステル出演の『演劇という芸術』(2007)、モンペリエ・ダンスフェスティバルにおいて創作したダンス作品『リビド・シエンディ』(2008)など。オペラやダンス作品の演出も手掛け、マルチな活動を展開している。さらに、短編映画監督としても活躍しており、『あなたが戻る前に』(2007)、『はじまり』(2006)などがある。 日本での公演は、『愛のはじまり』以来2年ぶり、フランスで制作した作品としては初めての公演となる。