アンドロイド演劇『さようなら』
テクニカルアドバイザー:石黒浩(大阪大学&ATR知能ロボティクス研究所)
死を目の前にした少女と、アンドロイド「ジェミノイドF」の静かな会話劇。
実在する人物の姿を精巧にコピーしたアンドロイドは、データ通信により、俳優(操作者)の表情と声を再現するため、より人間に近い「存在感」を持ち合わせます。舞台上に共存するアンドロイドと俳優を前に、観客は、どちらが人間なのか一瞬わからなくなり、操作者でさえ、アンドロイドの身体に自らを錯覚します。「ロボットと人間の境界」への新たな視点をもたらす本作には、ロボットやサイボーグに投影される人間の姿と、精密な装置としての人間の身体という、2つの人間性を見ることができます。人間とロボットが紡ぎ出す、生と死の物語は、私たちに、人間らしさとは何かを改めて問いかけます。
出演
アンドロイド「ジェミノイドF」
ブライアリー・ロング(青年団)
アンドロイドの動き/声:井上三奈子(青年団)
ロボット演劇『働く私』
テクニカルアドバイザー:石黒浩(大阪大学大学院基礎工学研究科システム創成専攻)
ロボット側監督・プロデューサー:黒木一成(株式会社イーガー)
一組の夫婦と2体のロボットが一緒に暮らす近未来を舞台に、働けなくなったロボットの姿から、人間とロボットの関係を描いた物語。
実際にイベントなどのガイド役で使用されている、三菱重工開発のコミュニケーションロボットwakamaruが、働き者のモモコと、働けなくなったタケオの役で登場します。働くことを機能とするロボットが、働けなくなったら、という物語には、ロボットと人間が互いを気遣う関係、さらに人間がロボットに投影していく「人の心」のあり方が見えてきます。また、本作では、人間とロボットの「自然な」対話を実現するため、台詞を発する「間」においても、緻密な演出がなされています。ロボットの最前線とともに、演劇が果たすロボティクスへの新たな試行にもご注目ください。
出演
ロボット「wakamaru」2体
太田宏(青年団)
井上三奈子(青年団)
※「wakamaru」は三菱重工が開発したコミュニケーション・ロボットです。
アンドロイドやロボットが、俳優と共演する演劇作品
人とロボットのコミュニケーションから見えてくる、"人間らしさ" と"人の心"
山口情報芸術センター[YCAM]では、最先端技術に親しみ、人とロボットのコミュニケーションと、その発展性について考える機会として、劇作家/演出家の平田オリザと、ロボット工学の第一人者、石黒浩によるロボット演劇プロジェクトの2作を上演します。
アンドロイド演劇「さようなら」では、実在のモデルそっくりに開発されたアンドロイドが、そしてロボット演劇「働く私」では、コミュニケーションロボットが、俳優と共演します。人間とロボットが共生する「日常」を描いた本作からは、「人間らしさ」や「人の心」とは何か、といった問いかけや、ロボットを介した多様なコミュニケーションの形が浮かび上がってきます。
公演終了後には、石黒浩らを迎えるトーク(18日)や、ロボットに出会えるイベント(19日)も開催。演劇とロボット工学が導く新たな視点、最先端技術に親しむ機会を、幅広い世代のみなさまに提供します。