大阪に来ています。
昨日と今日は、追手門学院高校に今年から新設された表現コミュニケーションコースでの特別授業です。
いわき総合高校にいた石井先生が、こちらに移って教鞭を執っています。石井先生には、『幕が上がる』の執筆当時から助言をいただき、今回の映画化にあたっても資料などを提供してもらいました。
たとえば、これは映画にもあるたき火のシーン(あまり詳しくは書けませんが)。もともとの原稿では学内の焼却炉でセットを燃やすという文章だったのですが、「今どき、学内でたき火をしていい高校なんてありません」と忠告され、河川敷に場所を変更しました。原作での変更が、映画では、いい効果をもたらしていると思います。
実は、追手門学院高校は、『幕が上がる』の主要キャストである黒木華さんの出身校でもあります。関西の高校演劇関係者はご存じの通り、追手門は高校演劇の名門校でもあり、黒木さんも在籍中は演劇部で活動していました。昨晩は、その頃からの顧問である阪本先生も交えて、授業終了後、会食をしました。
月曜日は、岡山県の津山市で、県の国語教育の研修会で講演でした。ここでも、たくさんの先生方から『幕が上がる』への期待の言葉をいただきました。ちょうど、公開が春休みに向かう時期になりますので、高校進学が決まった中学生たちが観てくれれば、確実に演劇部志望が増えるだろうと私たちは願っています。
『幕が上がる』のことを、こんなにたくさん書くのは、もちろん、本が売れれば、私の収入が増えるというのが最大の理由ですが、他にもいくつか動機があります。
映画制作の初期の段階で、本広監督からは、現在、アイドル映画がどれほど厳しいかを、たくさん聞かされました。また、「映画っていうのは、関わっている全員が盛り上がっていないと売れないんです」という話も聞きました。演劇も同じですが、映画の方が、圧倒的にステークホルダーの幅が広いので、当然、みんなで頑張らないと、すぐに気持ちがバラバラになってしまうのだと思います。
また、私も演劇という集団で行う芸術の世界に三十年以上生きているので、こういうときに、斜に構えたりするのはかえって格好悪いということも、重々承知しています。特に今回は、「原作者」という、現場ではなんのお手伝いもできない立場ですので、せめて、こうしてブログなどで、「私も参加してますよ!」ということを書いていきたいと思います。
それから、「原作者」と書きましたが、原作者なのに、ワークショップをしたり、劇中劇の稽古をつけたりという珍しいポジションでもあったので、多少、そのことは書き残して置いた方がいいかなとも思いました。
本日、『幕が上がる』の文庫版が発売されました。映画『幕が上がる』バージョン、ももクロが前面に出た大型の帯になっています。一件、これがカバーかと思うのですが、一枚めくると、もう一つのカバーが出てきます。当然、期間限定です。是非、お買い求め下さい。
今回の、この企画は、
千人単位の動員で活動をする小劇場の世界
数万人単位の動員をするアイドルの世界
十万部単位を売る出版の世界と、全国にある書店という販売網
百万人単位で観てもらう映画の世界
一瞬を数千万人が観るテレビの世界
それぞれが上手く連動しないと、きっとヒットしないのだと思います。
さらに、そこに、全国2万人の高校演劇部員、そして、おそらく30万人くらいいる高校演劇のOBや家族の皆さん。さらに、これまで私が関わってきた表現教育、コミュニケーション教育の関係の皆さんにも、応援をしていただきたいです。
高校演劇は、スポーツと違って大会も少ないので、普段、何をしているのか見えにくいところがあります。ぜひ、高校演劇部の保護者の方たちにも、本も読んでもらいたいし映画も家族で観てもらいたい。
また、「ももクロも受けたワークショップ」というキャッチフレーズは、これから、ワークショップ型の授業やコミュニケーション教育を推進していく上でも、大きな力となるでしょう。関係者からは、メイキングに入るはずのワークショップの様子を授業の教材に使いたいといった問い合わせもすでに来ています。
以前にも書きましたが、書籍は、たくさん売れると重版がかかり、その発行部数に応じて広告宣伝費が決まり、書店での扱いが増え、いい棚に置いてもらえるという、身もふたもないほどシビアな世界です。多くの方にご購入いただき、またご喧伝いただけるとありがたいです。
作家が、こんなに自著のPRをするのも、いささか興ざめかもしれませんが、先に記したように、斜に構えていてもしょうがないので、ここは一つ、率直に皆さんにお願いしたいと思います。応援して下さい。
特に、モノノフの書店員さん、元演劇部の書店員さん、演劇関係者の書店員さん、いまこそ、皆さんの力が必要です。よろしくお願いします。
私の小さな野望は、amazonのランキングで、講談社文庫部門(『幕が上がる』)と、講談社新書部門(『わかりあえないことから』)が、同時に一位になることです。まぁ、こんな作家は、そんなにはいないでしょうし、私にとっても一生に一度のタイミングかと思いますので。